一昨日の続き(出張先の埼玉から失礼します…)。
なぜ、国1試験に合格した名古屋大学の学生15人のうち、たった1人しか採用されないのか?
人事院に行って調べてみると、実は、採用試験の合格者は、実際の採用数の2・6倍。かなりの水増しになっている。つまりは、国家公務員1種という市場は、意図的に、採用する省庁側の買い手市場になるようにつくられている(約3分の2の合格者が入省できない)。
一昨日も書いたけれど、ここで力を発揮するのが、合格後に行われる意中の省庁を訪問して受ける面接なのだ(何度も書きますが、面接が一番重要なんですよ)。
…で、「誰でもキャリアになれるわけではない」というカラクリを、例えば以下のように、めちゃくちゃデフォルメして書くことができる。
東大出のAさんと名大出のBさんがいて、どちらも財務省に入りたいと思っているので、6月の解禁日を待って財務省訪問を繰り返すことになる。財務省からは、まず若い係員クラスが出てくる。よく知らないけれど、「キミは、消費税の増税は不可欠と思うか?」とかなんとか話し合うのだろう(笑)。基本的に面接は、入省させたい人間の雰囲気をつかむ場だから、話し合うテーマに深い意味はない。
しかし、名大出のBさんは、「(消費税の増税は)不可欠です!」とヨイショして答えても、この段階で間違いなく落とされている。なぜなら、面接官の係員は、東大出のAさんのボート部の先輩だったからだ(!)。
かくして東大出のAさんは、係長→補佐→人事担当課長と面接のグレイドが高まっていき、同期の法学部生と競い合うことになる。名大出のBさんは、他の各省庁を真面目に回るものの(同じようなことが起きていることを知らないまま)、内々定につながる手ごたえがつかめない…。
結局、Bさんは、霞が関からお呼びがかからず、かといって、いまさら民間企業には就職できず、併願して合格していた地方上級を受け入れて、名古屋に帰る選択をする(可哀相~)。
ある霞が関の事情通は、言った。
「新採キャリアを面接するのが、キャリア自身だというところがミソなんです。絶対にノン・キャリアにはやらせない。大学の後輩が来るとなるとキャリアの間に情報が駆け回るわけですよ。面接するときには、すでに関係者らは『後輩よ、よく来たな~』って言って合格者の肩を叩いているという、まったくのデキレースなんですよ。ノンキャリに面接をさせれば、そうしたアンフェアな情報が少なくなりなんとか客観的に近い面接ができますけど…。だから、キャリア制度を改革する余地はたくさん残っていますね」
最近では、各省庁が青田買いで唾(つば)をつけた東大出の受験者がどんどん国1試験に落ちるものだから(笑)、政府は、「合格者を採用数の4倍まで水増しする」というトンデモナイ閣議決定をした(!)のだが、人事院は、試験の公平さを確保するためか閣議決定に背くかたちで現在2・6倍でとどめているというわけだ。
かくして霞が関のキャリアたちの学閥偏重システムは、永遠に続くカラクリになっている。
はあ~、ここまで書いてきて充実感の伴わない疲れを感じる(笑)。
僕は、こんなことを書くために組合活動をしているわけじゃないっ! (でも、この話題をアップした途端にたくさんのリクエストがあったんで、自然にフェイドアウトさせることができなくなってしまったわけで…)
まあ、キャリアってのはこんな風に選ばれていて、仕事ができるとか人間味に溢(あふ)れているとか、他人の心の痛みがわかるとか、そんなこととは無関係なところから入省してくるんですね。
三島由紀夫が大蔵官僚を辞めて作家になるんだけれど、正直に言うと、三島のような豊かな感性を持った人間は、霞が関では生きていけなかったのではないか…。三島は、そのことを知っていたとすれば、本当に偉い作家だと思うな。
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