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2007/01/30

弁護士の魂

 こんばんは。

 僕は、毎日、商業新聞5紙と政党機関紙3紙を、ざっと読みますが、連載小説と言えば、「朝日」の吉田修一さんの「悪人」がダントツ面白かった。何十人もの登場人物を配し、主要な人々については過去に遡(さかのぼ)って現在までを告白させていく手法で描き、その合間に、若い男が若い女を出会い系サイトを使って誘い、そして殺害し、再び別の女を誘って逃亡するというメインストーリーが展開していく……、その果てに若い男は逮捕される、彼の告白を読む、……いったい誰が悪人だったのか? 本当の悪人はいたのだろうか? という重たい問いを残して昨日終わった。

 「朝日」夕刊と言えば、いま連載中の「ニッポン 人・脈・記 弁護士の魂」が、抜群に面白い。
 僕みたいに法学部に行きながら、アホー学部の人間になった者にとって、弁護士になった同期や先輩後輩は、いまでも眩(まぶ)しい存在だ。僕が古本屋のアルバイトをし、四畳半生活をしていた25歳のとき、弁護士になった後輩が、高価な夕食をおごってくれ、僕が「いいよ、払うよ」と断ると、その後輩は、黒革の二つ折りの財布を取り出して「俺、1年目で年収600万もらってんですから、このぐらい、大丈夫ですよ、出させてくださいよ」と笑い返したことが忘れられないほど……(笑)。

 ところが、「弁護士の魂」連載第5回までに出てくる弁護士たちは、スマートなエリートに間違いないのだが、しかし、弱い者の立場に身を置いた弁護活動を粘り強く続けている異色な人たちだ。痴漢容疑で捕まったものの「それでも僕はやってない」と訴える若者の弁護、高利貸しに追われ自殺寸前だった業者の弁護、過労死した夫の無念を晴らすために過労死110番に電話をしてきた妻の思いを代弁する弁護、理由なき殺人を犯した未成年の弁護……、そうして今回は、全盲の弁護士・竹下義樹(55)が、「格差社会に立ち向かおう」と呼びかけている。
 いま彼は、生活保護の違法な打ち切りで困っている人々を助ける裁判をたたかっている。
 
 この2年半、僕が団体交渉の相手として出会った会社側の弁護士たちは、こうした弱い人たちを守る弁護士とは無縁な人たちだった。例えば、突然のように団体交渉を打ち切り、労使の問題を、労働審判制度という(組合を排除する)土俵に勝手に持っていく……、例えば、団体交渉で約束したことをひっくり返してマスコミに伝える……、例えば、労働法をそもそも知らない弁護士が団体交渉に出てきて適当なことを主張するとか……(笑)、例えば、働いたことがまったくないと想像できる若い弁護士が、10数年間も契約を更新して働いてきた女性に「あなた、もう十分働いたでしょ?」とか質問する……、とにかく、会社の利益になると思えば、労働者の受けた傷など関係ないとばかりに労働組合に全力で刃向かってくる人たちだった。
 いくら依頼者の利益のために……と言っても、それは僕から見ると、「金のため」と言い換えても言い。

 今日の「朝日」連載の最後に出てくる川井理砂子弁護士(36)の言葉が、いい。
「これまでは弁護士は法律の分野だけやればいいと割り切ってきた。でも、どこまでもつかわからないけれど、あと一歩だけ踏み込んでみようと思うんです」
 彼女は、ホームレスでアル中の泥棒の国選弁護人となり、執行猶予を勝ち取るものの、さらに生活保護申請の手伝い、宿泊施設の用意まで行い、さらにさらにお酒を飲んで吐血する男性のもとに再訪し、病院へ行くようにすすめるのだ。

 読みながら、この人の弁護活動って、労働組合のオルグみたいな仕事じゃないか、と思った(笑)。
 そして、これからの新しい弁護士たちが、手弁当で労働組合の団体交渉に出て交渉テクニックを教えてくれたり、労働法を組合員に教えてくれたり、さらにさらに組合員を増やす組織化の運動に身を投じてくれたのなら、いままでのアマチュアオルグの無手勝流の限界はあっという間に解消するような気がしたのだ。

 ああ、泣けてくる。

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