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2006/09/11

祝辞、私が国公労連に来るまでのこと。そして皆様へ

「そこで老若男女入り交じった15、6人の従業員が2班に分かれて陰険な小競り合いを展開しているのを目撃した。彼らの目は憎悪で輝いていた。その脇でケガをした若い女性従業員が指先を歯で咬みながら小さなうなり声を上げて安物の絨毯の上でちぢこまっていたが、誰も手当てしようとはしない。(中略)女の怪我人など誰の視界にも入っていない。
 そのとき、工場長が小走りでやってきて隆司の耳元に小声で話しかけていた。『従業員は皆気が付いていませんが、実は会社の方針で従業員同士がそれぞれにいがみ合うよう、巧妙に仕組んであるんですよ。売れる商品など最初から作る気はなくて、彼らがどうやったらこちらの思惑通りに憎しみ合ってくれるか、そういうデータがほしいんですよ……。』」
      中原昌也著『あらゆる場所に花束が…』(新潮社)

 皆様、お仕事お疲れさまです。
 がぶり寄りjrです。国公労連内でjrとして働かせてもらっていた私ですが、先月末(大会終了とともに)国公労連および、がぶり寄りjrを卒業することとなりました。つきましてはこのブログでちょこちょこと顔を覗(のぞ)かせてもらっていました故、最後にお別れの挨拶(あいさつ)として私、jr自身のちょっとしたお話、聞いて頂ければ幸いです。


 さて個人的なことにはなりますが、私はミュージシャンであり作家である中原昌也が大好きです。
 組合に関わる方や労働運動に携わる方は、中原昌也のよさについてなかなか理解をして頂けないのですが、読んでない方は是非とも一度は読んで頂きたいと思っています。

 学生の時に見たライブと、友人がアルバムをくれたのがきっかけで、その頃の私は80年代GMニューウェーブのアナログを狂ったように買い漁り、ノイズのイベントがあると聞けばビジュアルがホームレスみたいなローティーンとクラブに通い、平日の昼間は「ダライアス外伝」(セガサターン版シューティング・かなりアシッドなゲーム・はまる)のプレイに入れ込むそっち系の、社会の適合が甚(はなは)だ難しい人間であったと思います。

 そんな私ですから、格別、労働組合や労働運動に興味を持っていたわけでもなく、むしろ何か「ガンバロー」とか「連帯」といったものに、ナンセンスさと不信感を抱いていたのです。
 適当なところで「結婚するかァ」と安易に考えつつ(そんな保証はまったくないというのに)、ちょっと虚無的な感傷に浸りながら、そのまま社会人になってしまいまして、民間のある会社に勤めたのです。

 その会社は、社長を頂点に社長(王)→社長の奥さん、娘(家来)→社長のいとこ、その友人(奴隷)→その他の平社員、OL(家畜)と、見事なまでに綺麗なピラミッド状の構造を成していて、上ランクには常に笑顔、あいさつ、お酒の席でもすべて敬語が強制されていて、これを忘れると1週間無視、残業2時間増という罰が科せられる、仕事の効率が大変悪い職場でした。

 その中でも男の係長は、自称「西田ひかる」似の女上司と会社の資料室で毎週のように情事を行い、社長は社長で気に入らない自身のいとこに毎朝会社前にある多量の犬の糞を拾わせ(どうも1匹分では無い)、その後その作業はなぜか「西田ひかる」似の女に移行し、営業所長は5m先でも分かる異臭を放ちながら何回でも同じミスをする、そのため私は、彼のミスのフォロー処理で平時の仕事は3倍になる。
 会社には、なぜか毎日のように消費者金融から電話がかかってきて、さらに毎月決まって3~4回ラジオ付きライト付きNASA製ボールペンを売る女が訪ねてきて、全く電話に出ない取引先の会社が2桁ほどある。
 そんなユーモアのある職場だったのです。

 月に一回来る社長が落とす個別説法の後、いつも必ず営業成績の悪い上司が私の近くへ来て、ブツブツと猥雑(わいざつ)な事を言ってきて、その度に私は吐き気と目の前の風景がぐらぐら揺れる変な症状に見舞われ、一度恥ずかしげもなく欲望丸出しに会社の倉庫に無理矢理誘われたときにはピークで見えているその上司の(あられもない)姿が、風景が、ネガとポジに交互に0.3秒くらいの早さで点滅する……。そんな事も経験しました。(多分ちゃんとした治療が受けられる病院に行った方が良かったのですね。)
 とにかく私は、毎日、何かの最前線にいて、その中でランナーズハイ的に仕事を続けていました。

 *余談ですが中原昌也氏の『ソドムの映画史』の中に、彼が経験した工場でのセンスのいい冗談のお話に少しは似てるのかなと傲慢(ごうまん)にも思います。

 そんななか、私は、何故なのかわからないまま、ある日突然会社の同僚とコミュニケート出来ないという理由で解雇される事になり、なまじ生活不安でどうしようも無くなり労働組合に相談しに行ったのがこの活動に関係するきっかけでした。
 狂った世界に倫理と責任追及は通じるのか? と、その時、産まれてこのかた発揮したことの無い正義のパワーを、私は、発揮したのだと思います。

 私のような身なりも育ちも汚れた人間に、果たしてどれだけのことが出来るのであろうかと真剣に考え、その結果、このままリアルにストリートチルドレンになるかもしれないとか会社との争議中にとても不安に思ったりしたのですが、今から考えると実は余裕であったのですね。
 私は、たった1人で不当解雇をたたかい、それをきっかけに労働組合の活動をすることになったのですが、あたりを見回すと、「ちょっとでかいイベントすっかー」っていうか、そんなスポーツ感覚で会社を相手取って団体交渉や裁判しちゃう輩(やから)がわんさといると知ったのです。それが「めでたい」「めでたい」と喜ぶ大人たちがいるんですから。

 
 ヒー! 組合の人ってヘンターイ!!


 そして分かった事があって、それは一番手っ取り早く、リスクが無く、彼氏と別れることも、病気になって諦めることも、仕事し過ぎで死ぬかもとか考える事もなくなるのが労働組合だってこと。で、ゲームに勝つように団体交渉をクリアすれば社長は謝って次のステージに進めるってわけ。働く者にとって労働組合の活動は、唯一のエンジョイをもたらす手段なのだ。
 間違いないです。

 それで、もう最後になってしまいますが、国家公務に携わる皆様へ。

 公務の職場は、私から見てぶっ飛ぶほど守られていると思います。
 私のような若輩者から見れば、ちゃんとした家があって、毎日ホカホカご飯があって、両親がいて、五体満足で、みんな高校出てて、運がツいているみんなが、労働組合に入る事で余裕で世界は変わると思うんだ。

 でもそんな事考える人は少ない。

 それは公務という、ある意味で守られていて、甘えの通じる職場だからこそで、そのしわ寄せが一番弱い立場の人に出て、そして矛盾の激しさも並じゃない。攻撃の矛先を向けられた者だけが、毎晩、頭を抱えている。逃げ場を民間より閉ざされているように思わされている。
 また、それに気づかない場合も多い(怖いけれど、抱えるものは行き着くとこまでいく場合もある)。そして、そのことによってヨロシクやっている見えない少数の悪い人間がいることに気づいていない。

 それでも、社会からも職場からも苛(いじ)められまくった(がぶり寄りが必死になって相談にのっている)非常勤さんのような一番弱い部分が、何にも得にならないのに自身を犠牲にして現実の状況をなんとか打開しようと考えて国公一般に相談にくる。
 この日々の犠牲の積み重ねが、のちのち自身を守る事になる……、そして自身と関わった(気づいてない)すべての人を守ることに繋がる……と、行動する。その恩恵を少なからず私も受けている。

 泣けてくる。

 守られているからこそ、死ぬ気にならなくとも、スポーツ感覚で革命は起こせるというのに……。それも公務員から……、とノンキャリの私なぞは思う。

 労働組合でエンジョイしよう。

 私のちょっとしたお話はここで終わりにしたいと思います。
 私は大好きな中原氏の小説が遺物になり、私たちが通り過ぎていったことのイコンになることが一番笑えるハッピーエンドでは無いかと思う今日この頃。 

 皆様長生きして、お元気で。    
 労働相談は国公一般へ。   

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コメント

このブログの存在は以前から知っていましたが、久しぶりにのぞいてみたら、この祝辞に遇い、いっきに読んでしまいました。さいごのほうはむちゃ感動しました。組合のたいせつさをあらためて感じました。わたしは契約社員で、派遣先では同僚というか、同じ契約会社の人たちは顔をあわせるのがむずかしい状況で働いています。こんな雇用形態のなかでも、解雇通告の事件がありプチ闘争したことがありました。すきあらば組合をつくろうと思っていますが、すきなんてない!結集の努力をしていくしかない!と日々模索中です。組合をつくりにくいように労働形態も変化させているのが雇用主たちの目的なんですよね。そこを押して進みたい!!

投稿: r子 | 2006/09/12 午後 05時41分

 JRさんのぶっ飛んだ祝辞に乾杯だ!!
あなたの、その感性を大切にしてください。そうすれば、日本の労働組合運動は、きっと、少しずつ変わっていきます。

投稿: ハチミツ | 2006/09/12 午後 09時35分

jrさんが書かれたことを胸にきざんで、がんばっていきたいと思います。すばらしい祝辞ありがとうございました。

投稿: yi | 2006/09/13 午後 08時34分

jrさんの感覚ってスゴイですね。僕の職場でも組合の人を見ると、なんかスゴイ距離感があるんです。政治の事とかムズカシイ話をよくしていて、近寄りがたいイメージです。でも、Jrさんの文章を読むと、「あぁ 組合はムズカシイ所では無くて、弱い立場の者が生きていく為の最後の砦なんだ」って思いました。Jrさんのスポーツ感覚、労働組合でエンジョイしよう!の感性には、ビックリしたのと同時にこれからの、組合イメージを変えていく可能性を感じます。どうぞ、お体に気をつけて下さい。益々のご活躍を期待しております。

投稿: 田舎の地方公務員 | 2006/09/18 午後 11時13分

r子さん、ハチミツさん、yiさん、田舎の地方公務員さん
コメントどうもありがとうございます。

多分皆さんは労働組合にすごく関心のある方なのかなあと思います。
自身は全く予想だにしなくこのような活動に携わることになったので、組合の歴史的な背景や活動の論理解釈が無くこれがいいのか分かりません。
知る人ぞ知るTVに出ない安くて美味しいご飯の名店といった感じでしか(少しその部分浅はかさではあるかもしれませんが)捉えていなく、そのダサさ。そこに命をかけることの究極のコアさはある研ぎ澄まされた世界の真理をみれる一手段であると思っています。

どれだけカッコ良くてて気持ちイイか。

このように労働組合を捉える若者は結構いて、知的な趣味として組合活動している方々を何人か見ています。
しかしながらこの感覚は若者だけのものかと思いきや今回皆さんもその感覚を持ってられるのだろうと思い私はうれしく思います。
どうもありがとうございます。

投稿: | 2006/09/22 午後 10時31分

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