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2006/09/28

印鑑の話

 こんばんは。

 先々週のことなんですが、僕、印鑑を紛失(ふんしつ)してしまったんですよ。
 一個90円の三文判とかスタンプ印とかだったら、まったく気にしないんですけれど、無くした印鑑というのが、僕の36年間(正確には20年間)を共に歩んだ、ふるさとの中学校が卒業記念に一人ひとりに作ってくれた象牙の印鑑(側面には、わざわざ「祝卒業千郷中学校」と刻印されている印鑑)だったから、もう、なんだか目の前が真っ暗になっちゃって、ほとんど仕事が手につかないというかノイローゼ状態に陥ってしまいました(笑)。

 嘆いていても仕方がないので、新たに印鑑を作り直しましたよ、一個7500円もするちょっと高級に見えるやつ。それくらい出さないと、また無くなってしまうような気がして……。だって、いつ、どこで、どうやって印鑑を無くしたのかすら僕には分からないという、最悪な失い方をしたものだから、高い印鑑なら大切さを保持できると思って……。
 そんでもって、取引している三つの銀行の通帳印を変更し、さらに国公一般の通帳印も変えました。なかなか煩雑(はんざつ)な手続きでした。


 ……それが、2週間経ち(僕の気持ちがおさまりつつあるとき)、国公労連本部に新しい執行委員の方々がやってこられて、机の移動が始まったんですが、その大掃除のなかで、僕の机とは遠く離れているAさんの机の奥からポロッと出てきたというのですよ(!)。
 資料や本をどかせたら、ブックエンドの手前、そこに見知らぬ人の小さな印鑑が横たわっていたというのです。

 あ゛あ゛~、それ、僕のだった~。

 見慣れた、使い慣れた印鑑を指に触れたとき、ホッとすると同時に、なぜ、そんなところから出てきたのか、僕自身の行動をいくら客観視してもまったく分からず、なんだか不安な気持ちにもなりました。


  さて、ながながと僕の印鑑紛失騒動の顛末(てんまつ)について書いたのは、使用者から、突然、「ここに印鑑を押してください」と言われたときは、「少し検討させてください」と言わなければならない、ということが書きたかったからなんですよね(笑)。

 霞が関や大手町の中央官庁には、非常勤国家公務員だけでなく、民間労働者である派遣・請負の労働者も働いているのは周知の事実なんですが、彼女彼らは、労働基準法にのっとって雇用契約を交わして働いている。だいたいのそれは、期間限定の契約で、一年間とか半年とかになっている。年度末に業務が落札できなければ、会社が労働者に対して「仕事が取れなかったので、全員辞めてもらいます」と言えるように。

 ところが、会社側は、とにかく人件費を削りたいものだから、ちゃんとした雇用契約を交わした後になって、条件を引き下げた悪い雇用契約を交わそうとしてくるんだ、これが。
 そういう汚いやり方を「労働条件の不利益変更」と言うのだけれど、基本的にやっちゃいけないことになっている。しかし、会社はやるわけですよ。例えば、一年契約だったのが、2カ月更新になっていたり、日給8500円だったものが7700円になっていたり、なにげに契約締結日が前倒しされていたり(笑)、そういうデタラメな契約書を一方的に提示して、「これに判子を押さなかったら、あんた、辞めてもらうしかない」とか言って少し脅したりするんだ。

 甘く見ちゃいけないのは、会社から「これに判子を押さなかったら、明日から来なくていいですよ」と言われると、意識の高い組合員でさえ、どうしていいかわからなくなって、最後には、判子を押してしまうということなんだ。
 ある組合員は「頭がパニックになってしまいました」と振り返るし、ある組合員は「『少し待ってください』と言ったのですが、会社は『あなたが、だだをこねても、これ以上の条件にはなりません』の一点張りで、仕方なく押しちゃったんです」と述懐する。
 会社の一方的な、判子を押せ攻撃は、不自然な力で、しかし、労働者の「自発的な」押印を獲得してしまうのだ。


 そんで、もっと言いたいのは、最悪な労働条件の雇用契約であっても、いったん労働者が判子を押したら、それが有効となり、過去にも遡及(そきゅう)し、前回の契約は古いものとみなされてしまうということだ。いったん印鑑を押した契約書は、隔離部屋に押し込まれて、脅されて、無理矢理、判子を押させられたという客観的な証拠がなければ、裁判で争ってもほぼその有効性を覆(くつがえ)すことはできない。
 さらに、裁判でもそうなるのだから、雇用関係に口出しできない労働基準監督署に訴えても、監督官は何も出来ないということ……。

 怖いな~。
 自分の労働条件が悪くなっていると分かっていながら、目の前にある契約書に印鑑を押してしまうというメンタリティー(心性)。

  

 いま、国公一般は、(無理だと思いつつも、働く者の立場に立って)そういう一方的な不利益変更の雇用契約書の破棄を求める団体交渉に取り組んでいるし、実際、会社と団体交渉にのぞむなかで、はねのけつつある。
 
 もう一度言いますね……、
 変更された雇用契約書に押印を求められたら、「少し検討させてください」と言って相手から離れること。それから、すぐに労働組合に相談すること(笑)。
 

 とにかく、絶対に印鑑を押さないこと。

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