偽装派遣とJr.さんのメール
本日の午前中、ある省庁当局と団体交渉。
中央省庁の建物の保守・点検業務を請け負っている組合員への不当労働行為の是非をめぐってマイルドに話し合いました。当局と国公一般の認識が一致した点は、次の通り。
1.当局は、請負業務の契約をした発注先会社の労働者人事について一切介入しないこと。
2.請負契約書に記載された仕様書(仕事の内容)は、詳細に書き、それを厳密に守ること。
3.請負業務契約にある「監督及び点検」は、官庁側が監督簿を作成し、その達成度や状況をしっかりと記入し、問題点があれば、発注先会社の責任者に注文すること。
何度も書きますけど、国公一般という組合は、霞が関で働く正規の国家公務員と非常勤国家公務員だけでなく派遣職員や請負労働者も一人から加入できる組合です。派遣・請負労働者が組合員になった場合、雇用されている会社だけでなく各省庁当局とも団体交渉を打つことができます。本当に新しいスタイルの組合。
国家における公務という業務が、法律に基づいて正常に遂行されるためには、まさに労働組合の団体交渉によって問題点を当局に伝えることが有効です。そのとき、公務員ではなく、純粋な民間労働者である派遣・請負労働者の鋭い目や感性に教えられることがたくさんあります。
さて、こんな前置きみたいな長い文章を書いたのは、今日付の「朝日」1面、昨日付の「朝日」1面から3面、その日の夕刊ではキャノンの偽装派遣労働者の正職員化のスクープを読んだからでした。長い前置きは、国家公務員の職場でも似たような違法が起きているってことを暗(あん)に知ってほしくて書きました(笑)。
昨日の「朝日」を読んだとき、見出しが「実質は派遣、簡単にクビ」「偽装請負 製造業で横行」だったから、まるで共産党機関紙「しんぶん赤旗」かと思ったほどでした(笑)。
だって、これまで偽装請負根絶キャンペーンを張っていたメディアは、唯一「赤旗」だと断言できるから。告発ルポやスクープで厳しく追及してきたのは、キャノンやトヨタ、松下、東芝、富士重工業、いすず、コマツ……など居並ぶ大企業製造業。それを、天下の「朝日」がそのまんま後追いしていたから笑ってしまったのでした。このブログで紹介した徳島県の光洋シーリングテクノの偽装請負についても取り上げているという徹底ぶり(笑)。
まあ、政党・政治のことは脇に置いておくとしても、しかし、マスコミが労働問題を大々的に取り上げたことは歓迎すべきことだ。こんな違法は、日本全国いたるところにあったんだから。
最近放映され、大反響が巻き起こっているNHKスペシャル「急増 働く貧困層」といい、いよいよマスメディアは、小泉内閣の光と影のうちの「影」の部分に焦点を当てた企画を連打し始めた。僕はそもそも小泉内閣の「光」なんて存在しないというか、堀江とか村上ファンドとかごく一部にしか当てられなかったと思っているし、小泉首相が「いま痛みを我慢すれば暮らしは楽になる」なんて大ウソこいていたけれど、僕は、痛みは永遠に続くと思っている。だって、小泉内閣は構造そのものを変えたのだから……。
こういう記事や番組が、熱狂の季節が終わり、小泉内閣の黄昏のときにしか出てこないことが少し悲しい(笑)。
小泉内閣が僕らに強いた痛みの一つが、日本の美徳でもあった日本型雇用制度(終身雇用、年功序列)をズタズタに破壊したことだった。先週の社会保障制度のシンポでも議論されたことだけれど、これからの若者たちは、その不安定雇用ゆえに結婚もできないし保険の掛け金も払えない、払えないから年金も医療補助も受けられない、文句を言えば「お前は努力をしていないからだ」と説教される……、そういうわけで僅(わず)かなお金をめぐって悲惨な殺人があちこちで起きる、死ななくていい病人が次々に死んでいく、まさにドストエフスキーが描いた19世紀ロシアのような世界が待っているってわけなんだ。
怖いけれど、仕方がない。仕方がないけれど、仕方なくない。
だって、そこでチラッと光るのが労働組合の団体交渉なのだから(笑)。
昨日、とある地方の高校生に労働法の大切さを講演してきた「がぶり寄り」Jr.さんが、僕んところに、こんなメールを送ってきた。
「おはようございます。がぶりさん、昨日は京都にある信頼できる組合など、、、わざわざ教えてくれてどうもありがとうございました。実は、講演のあと、京都に住んでいる女子高生が『有給休暇を取れるなら取りたい』との話を相談してきて、わたし、彼女高校生ということもあって、どうしたモノかな。と悩んでいたのです。がぶりさんの的確なアドバイスを伝えたら、その後、定時制夜間部に通う18歳の少女(クミちゃん)がネットで京都総評とかを調べたみたい。。。。何が一女子高生を行動に駆り立てたのか、どうもわたしの講演(笑)、いまの若い人はバカな経営者になめられてる、有給休暇もらえるのに盗られてるって言った話に感激して、彼女は今日、一人でいつも昼間働いているスーパーRのチーフに交渉するそうです。『闘う女子高生』(笑)、、、、、その純なやる気に、わたしは帰りがけ青年ユニオン事務所に寄って、(クミちゃん)に電話。タケ君とゾエさんも電話に介入してきて労働相談しつつ、彼女を励まし、今日ある交渉に臨むお互いの激励となったわけでした。世の中には年齢や立場に関係なくその底抜けな清純さと意識の高さを持った人間がたくさんいる事に感激したのでした、わたし。いやはや!」
いま全国の若者たちが、労働法を学んで会社にたたかいを挑み始めているんだな。
僕も感動しました。
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