たたかうことの第一歩
僕は、このブログでも何度か書いているんだけれど、首都圏青年ユニオンの組合員でもあるから、民間企業で働く若い労働者たちの団体交渉のサポートも行っている。しかし、青年ユニオンの団交に入るのは時間が空いたときという、例外中の例外なんだけれど。
ただ、国家公務員の「紳士協定」的な団体交渉と「何でもアリのバトルロイヤル」型の民間企業の団体交渉の違いとか特徴がよくわかって、これまた勉強になるわけだ。
この前、共同通信の記者が青年ユニオンの団体交渉に参加して、それを短いルポにした記事が全国の地方紙に配信されて、僕の弟も読んだらしく、「兄さん、こういう活動というかたたかいが広がるといいね」と電話をかけてきた。
数年前なら考えられない状況が、マスコミを含めて動き出している。
非正規労働者の爆発的な増大は、使用者に、働く者を「モノ」のように見ることを可能にさせ、いつでも代替え可能だという確信を与えることになった。霞が関の各省庁でも少しずつ広がる派遣労働者の受け入れは、違法すれすれの状態なんだ。ここ連日のようにかかってくる派遣労働者からの電話・メール相談に耳と目を傾けると、そのことを確信するんだ。
とりわけ、厳しく特定されるべき業務内容が無限定となっている現実とか派遣先の責任とされる派遣先台帳が作られていない(台帳があっても派遣労働者の職場改善要求を書き留めていない)とか、派遣先の責任者が明確になっていないとか、本当に挙げればキリのない問題がたくさんあるのだ。
しかし、問題は、国公一般という労働組合に相談したのはいいけれど、これからどうすればいいのかということ。不満や不平や要求はわかった、じゃあ、これからあなた(相談者)はどうすればいいのか、ということなんだ。
「名前を出して会社と交渉するのはどうも……」
「(電話口から)匿名でお願いします。匿名で何とかなりませんか?」
「組合だけの力でやってほしいのです」
「職場は言えません」
僕は、そういう台詞(セリフ)を何度も聞いてきたけれど、そして、その台詞を吐く相談者の気持ちもわかるけれど、しかし、結局のところ、そういう場合は、彼女彼らの要求は本物じゃないと判断している。
なぜなら、首都圏青年ユニオンの組合員となって団体交渉にのぞむ若者たちのほとんどが、自分のクビを覚悟で会社側とたたかう決意をするのを見てきたからだ。だからこそ、組合と他の組合員たちは、忙しいなかで時間のやりくりをして、たった一人の仲間のために団体交渉に参加してきたのだから。
要するに、使用者と働く者が対等に冷静に話し合える場が、団体交渉の場しかない限り、組合員となって団交申し込みをするしか、要求を実現する方途はない。
だが、時代が少しずつ変わりつつあるのを実感する毎日だ。
若者は何もしないとか無感動だとかフランスのように怒りに燃えて立ち上がらないとか、いろいろ揶揄(やゆ)されるけれど、僕の感覚では、少しずつ少しずつ働く者たちの変化が起きていると思うのだ。
何度も言う。
たたかうことの第一歩は、名前と職場を明らかにして労働相談にのぞめるかどうか、だ。
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