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2006/06/16

中野区立保育園の非常勤保育士たち

 東京都中野区が、2年前、区立保育園で働いていた28人の非常勤保育士を全員解雇するという事件があって、そのうち4人の女性たちが勇気をふるって立ち上がり、解雇の無効を訴えてたたかっていた裁判の判決が8日、東京地裁で下された。解雇無効の訴えに対して、判決は「公法上の任用行為であり、期間一年として任用された以上、再任用を請求する権利はない」とのべて退けた。任用は、国の裁量だから文句は言えないという従来の形式論を踏襲したものだった。
 しかし、判決は他方で、被告である中野区に対して、雇用継続の期待権を侵害したことは法の保護に値するとして、4人の元区立保育士にそれぞれ40万円の慰謝料を支払うように命じている。彼女たちは、直ちに控訴の手続きを取り、引き続きたたかいを広げようと決意している。

 判決文のなかから、いくつか引用しておきたい。

「『非常勤』の保育士といっても、その職務の必要性は一時的なものではなく、将来的にも職務が不要になるとは考えられないこと、保育士という職務は、専門性を有する上、乳幼児に対する保育に従事するものであって、職務の性質上、短期間の勤務ではなく、継続性が求められること」

「定年はない」「一日でも長く働いてください。辞めないでください」「正規と同じように非常勤も異動するので大丈夫ですよ」(と言った中野区の説明など)によって「再任用が、原告らにおいて9回から11回にも及んでいることを考慮すれば、原告らの(契約更新の)期待は法的保護に値する

 専門性を有し、短期間の勤務ではなく、継続性が求められる。そんな大切な仕事をしているのに、そもそも「非常勤」というのは無理がある。9年も11年も継続雇用しているにもかかわらず、だ。こんなに簡単にクビにできるようなシステムが、いまの日本社会を根本からおかしなものに変えつつある。ホリエモン、村上ファンド、福井日銀総裁……、資本金を汗水流して働いて用意せずに他人から融資してもらい、右から左へ移動させるだけで莫大な利益をあげるような「働き方」が、マスコミによって持ち上げられている。

 ある非常勤保育士は、次のように言っている。
「わたしたちは、1年契約を繰り返し更新しながら10年以上にわたって区立保育園で働いてきました。わたしたち非常勤保育士は区か『長く働いてください』と言われていて、65歳まで働き続けられると思っていました。年収200万円にすらおよばない低賃金ですが、子どもたちの成長に心を砕いて働き続けられたのは、保育士としての誇りがあったからです。子どもと保護者のために一所懸命働いてきたわたしたちが、なぜ、『たかが非常勤』と軽んじられ、クビを切られなくてはならないのか、いまだに納得いきません。区を相手取った民事裁判は一部勝訴判決を得、引き続きたたかっていきます」 
  

 地域の保護者からも、「あまりに乱暴な首切り」「子どもたちとなじんだ先生を引き離すのはひどい」という声があがっていた、中野区の非常勤公務員リストラ方針……。新聞によると、今週初め、リストラを進める田中区長は、戦後2番目に低い投票率の選挙で再選されたという。

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コメント

はじめまして。
東京高裁で損害額の大幅増額が認められましたね。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071129k0000m040084000c.html

投稿: みのりん | 2007/11/29 午前 08時41分

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