公務派遣の深い闇 その2
読者のみなさん、こんばんは。
最近、「『さくら水産』ダイエット」によって(知らぬ間に)約4キロの減量に成功していた僕なんですが、ダイエットの本質とは「強靱(きょうじん)な精神を確立することと見つけたり」ということを悟りました(笑)。ダイエットの失敗を重ねる方々のために、来週、「がぶり寄り」が励んだ「『さくら水産』ダイエット」なる無謀について書きたいと思います。
しかし、新橋のように居酒屋「さくら水産」があるところ限定ですので(笑)。だいたいわかりました?
さて、ダイエットのことより、昨日のエントリーの続きなんですが、そもそも派遣会社ってのは、何なんだ? ということをよく考える。もちろん、派遣会社ってのは、登録している派遣労働者を派遣先に送り出すっていう仕事をする会社のことなんだが、派遣社員は、派遣先の仕事がなくなったり任期満了で派遣先から離れるとだいたい派遣会社を辞めるとか賃金無しで待機するっていう傾向があるから、派遣会社というのは常時、派遣労働者を雇っているという実体も外形性もないときている。にもかかわらず、労使関係でいうと、派遣労働者の使用者は、働いている派遣先にはなくて、あくまで派遣会社にあるのだ。
僕に言わせれば、口は悪いが、派遣会社とは、現代の人身(労働者)売買ブローカーのことなのだ。労働者を派遣すること、派遣先で働く労働者を長く職場につなぎとめておくことのみに最大の価値を……、つまり、儲(もう)け口を置くので、派遣会社は、売り上げを伸ばすためには何でもかんでもやるときた。つまり、労働局や組合からチェックを入れられなければ、派遣法を破ったって儲けられればいいと考えている。
どこの派遣会社も同じようなことをしている。
例えば、派遣労働者であるあなたの持っている「就業条件確認書」(あるいは「派遣スタッフ雇用契約書」)を見てほしい。その用紙の「業務内容」には、たぶん、「5号、8号」とか「OA業務、ファイリング」って書かれているだろう。
問題は、何なんだ、その「OA業務、ファイリング」ってのは? ということなのだ。
おおかたの派遣会社は、↑こう書けば、すべての事務作業がカバーできると思っているのだが、それが派遣先におけるトラブルの第一の原因なのである。霞が関のある省庁に派遣されている職員の「確認書」にも、もちろん「OA業務、ファイリング」と書かれていて、それだけしか書かれていない。
派遣先責任者と指揮命令者の欄には、もちろん現職の国家公務員の名前が記されている。現職の国家公務員が、民間労働者である派遣労働者を指揮・監督しているのである。ああ、この問題は、後日、人事院を巻き込んで、じっくり検討することにしよう(笑)。
いまは、「業務内容」の問題点に絞(しぼ)る。
実際、派遣労働者が霞が関のフロアでやる仕事は、どうなっているのか?
派遣法の建前から言うと、「5号=OA業務」というのは、パソコンなどのOA機器で入力・プリントアウトする一連の流れの業務をいうのだが、忘れてはいけないのは、機器は「迅速かつ適切な操作に習熟を必要とするものに限られ」、「ファクシミリ・シュレッダー、コピー、電話機、バーコードの読取機」は、含まれないということなのだ。当然、新聞記事のスクラップとかお茶だし、掃除、印刷物の配布、郵便物の集配などは、絶対に含まれない(笑)。
さらに、8号=ファイリングは、どうか。建前では、文書や磁気テープなどの作成・整理をいうのだが、ここでも忘れてはならないのは、「高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とするものに限る」ということだ。ファイリングの対象は、文書、図書、新聞、雑誌、帳簿、伝票、カード、ディスク、カタログ、地図、フィルム、磁気テープ、カルテ、写真などさまざまあるが、あくまで「高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とするものに限る」のだ。厚労省のマニュアルには、ご丁寧に「個人の机の周囲の片付けや文書等の番号順の並べ換えの業務はもとより、郵便物の仕分けや売り上げ、経理伝票等を取引先別に仕分けする業務等文書等の内容や整理の方法等について専門的な知識等を用いることのない業務は含まれない」と書いてある。
この前、東京・晴海にある東京労働局需給調整課に行って、僕が「要するにファイリングって何スか?」と聞いたら、担当指導官は「個人的な意見ですが、該当する業務は、図書館の司書ぐらいですね」と答えたのだ。間違っても「霞が関の事務補助業務ですね」とは言わなかった(笑)。
つまり、派遣で働くあなたがしている仕事は、たぶん、派遣会社が適当に枠はめした「5号、8号業務」とはまったく違うものなのだ。国公一般が解決した事案では、なななナント、派遣業務として絶対に許されない「警備業務」なんていうものがあったほどだ。派遣会社は、おそらく脱法・違法を承知の上で、派遣先から求められている業務を期間の定めのない政令26業務に無理矢理あてはめて、労働者を貸し出している。派遣労働者の時給に何割かをかけたマージンをより長くピンハネできるようにするためなのだ、きっと。
以下、僕のパソコンに送られてきた労働運動の業界誌「連合通信」のニュースを貼り付けておこう。
(見出し)人材派遣協会と懇談 全国ユニオンや派遣ネットワーク 権利向上を強く要請
全国ユニオン(鴨桃代会長)とNPO派遣労働ネットワークが3月1日、日本人材派遣協会と懇談会を開いた。毎年恒例となっている「派遣春闘」の一環で、派遣労働者の権利向上に向けた要請と意見交換が目的。今回は賃金問題を重視し、派遣事業者に対するマージン規制や最低時給のルール化を強く訴えた。雇用の不安定化を進める契約期間細分化への歯止めも強調した。
労働側が要請したのは二十項目。①一般的事務なのに専門26業務に偽装して、期間制限や直接雇用の努力義務を逃れる脱法行為の排除 ②高額マージンや多重派遣による多重マージンの排除 ③長期派遣を予定しながら、1~3カ月の短期契約を繰り返し更新する「細切れ契約」の撲滅 ④最低時給1780円以上のルール化(年収300万円相当)──などである。
派遣ネットの中野麻美理事長はあいさつで「雇用の二極化がすすみ、派遣スタッフの低賃金化や、社会保障の面からの排除が危ぐされる」と述べ、派遣労働を将来に希望をもてる働き方にするための率直な意見交換を求めた。
●低下する派遣賃金
派遣ネットが今年実施したアンケートによると、派遣労働者の平均時給は1309円で、1994年の1740円から低下しつづけている。厚生労働省の調査も1425円で、実労働を1日7時間で計算すると、年収はどちらも200万円台前半の水準だ。
労働側はこうした実情が格差拡大の根っこにあるとして賃金の改善を訴えたが、協会側は「個別企業の経営努力」と答えるにとどめた。
マージンが高すぎるとの指摘に対し、協会側は「経営努力しているはず」と述べ、賃金率(派遣料に占める賃金の割合)については「実情は77~78%ぐらい」と述べた。協会として賃金率を明らかにしたのは初めてで、今後高額マージンを規制していく際の目安になるといえそうだ。
●後を絶たない規制逃れ
「実際の仕事は庶務や一般事務が多いのに、契約はOA機器操作の専門業務」(参加した組合員)など、専門業務を装う契約が後を絶たないとの指摘もあった。
一般業務の場合、一年を超える時に使用者に直接雇用の申し込み義務が発生する。期間制限のない専門業務として契約することで、こうした規制を免れようとしているわけだ。
労働側は脱法行為を批判しつつ、「実態に則した契約業務を明記することが必要」と訴えた。
●細切れ契約が増加
長期間の就労を予定していながら1~3カ月の細切れ契約を繰り返し更新させたり、理由なく契約期間が短縮されるケースも増えている。ユニオンの関根秀一郎副事務局長は契約期間が短期化するほど、次の更新を考えて、職場での権利主張や苦情の訴えができなくなると指摘。
協会側も「事務処理が煩雑になるとともに、ビジネスも不安定になる」と述べ、会員企業に対して顧客(派遣先)の言いなりにならないよう求めていくと答えた。途中から契約期間を短縮するケースについては「理由を開示すべき」との見解を示した。
同ユニオンと派遣ネットは3月10日に、厚労省との交渉を予定している。
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