一番最初にたたかうひと
女性ユニオン(東京・渋谷区)から機関誌「ファイト」1月30日号が送られてきた。その名の通り、女性「性」にこだわって活動している組合で、女性がおかれている労働実態調査や世界の女性労働者との交流などを含め、1カ月に約40件の労働相談に取り組みながら、団体交渉や裁判をたたかっている。
女性ユニオンがたたかっている裁判の一つに、「公務パート雇(やと)い止(ど)め裁判」がある。国家公務員の組合で非常勤職員の組織化に取り組んでいる僕が、ずっと気になっていた裁判だ。この間、傍聴や支援行動、シンポ報告などに参加してきた。
この裁判の判決が、3月24日(金)午前10時、東京地裁636号法廷で言い渡される。3月30日(木)午後6時30分から判決報告集会も予定されていて、多くの人が、この裁判が問うている意味を理解してくれると嬉(うれ)しい。
以下、原告Mさんの意見陳述を書き写しておきます(機関誌「ファイト」から)。
私は、2003年3月末、13年11カ月勤めた国立情報学研究所から突然雇い止めされました。私に仕事上の落ち度があったわけではありません。私は、国立情報学研究所の仕事は日本の学問を縁の下で支える仕事と思って、真面目に働いてきました。また、仕事がなくなったわけでもありません。私が担当していた仕事は、雇い止め後も業務委託として継続し残っていました。
雇い止めは、国立情報学研究所当局が、「非常勤職員は3年」と途中から一方的に方針変更し、私たちに知らせることも、承諾をとることもなく、勝手に実行しただけです。いくらなんでも、これは酷い、理不尽です。
私は、雇い止めに遭うまでは労働組合に入ったことはありませんでした。労働者の権利について深く考えたことがありませんでした。まして自分が裁判するなどと考えたこともありませんでした。でも、当局から組合との交渉も拒否され、私には裁判に訴えるよりほかに残された道はありませんでした。
裁判を起こして3年間、私は、裁判や労働組合を通じ、想像もつかないほど多くの人々に励まされてきました。また、私と同様に公務職場で働き雇い留めにあった人たちが多く存在することも知りました。生活のため仕事をしながら裁判を続けるのは大変なことです。特に、非常勤労働者が裁判へ訴えるのは、生活への圧迫を考えるととても難しいことです。生活や金銭的な理由その他、さまざまな理由で裁判をすることができない非常勤労働者は、大勢います。私と一緒に国立情報学研究所を雇い止めされた人にも、「決して許せない」と思いながら裁判ができず、悔しい思いをしつつ私を応援してくれている人がいます。私は、そうした人たちの思いを代表するつもりで今日ここに立ちました。
私のこの3年間は、アルバイトの掛け持ちをして働きながら裁判をしていくという生活で、とても苦しいものでした。精神的にも、被告(国)が雇い止めの言い訳を主張するたびに、単に数字合わせとして簡単に切り捨てられた悔しさ、納得できない思いがこみあげてきて、繰り返し傷つき、非常に苦しみました。
でも、裁判を通じて知り合ったある女性が、私をこう励ましてくれました。
「10回言っても届かなかったとしても、100回、1000回言い続けることで現実を変える力になると信じたい。1人が1000回言うことが無理であったとしても、同じ立場にあるものが、あきらめず、一緒に声をあげれば変わっていくはずです」
私は、使い捨てにされた非常勤職員の1人として、何度でも声をあげたいとおもいます。
私たち非常勤職員は単なる数字ではありません。
心を持った人間です。
公務職場で働く非常勤職員は、民間の労働者には認められている労働者としての最低限の権利すら認められていません。どうしてもこのことには納得できません。公務職場の非常勤職員に民間労働者なみの最低の権利があることを認めてください。人権を考えたら当然のことではないでしょうか。裁判官に心から期待し要望します。
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コメント
先日はどうもありがとうございました。
「本当の組合なら、駆け込んできた人を徹底的に守る。それは、自分の生活を切りつめることになるかもしれないが、今、それをやらなければ。」という言葉がとても印象に残っています。
☆リンク&トラバ、させていただきました。
今後ともどうぞよろしく。
投稿: tetsu | 2006/02/16 午後 10時26分
tetsuさん、学習会では失礼しました。僕の思いが、少しでも伝わったのなら本望です。仲間を守ることは人間を守ることで、それは群れのなかで生きてきた人間の本性だと思うんですけれどね。
p^^qさん、これは、ケア学?の本質なんですね。組合オルグの仕事と似通っていると直感的に思いました。今後ともよろしく。
マキシムさま、国という権力機関とのたたかいの大変さを共有できれば……、と思います。薬害エイズや元ハンセン病者への国賠訴訟など国を動かしたエネルギーの大きさを顧みながら、自分の非力を感じます。
投稿: 国公一般担当者 | 2006/02/17 午後 03時35分