働く者の恋人――労働条件通知書
霞が関で働く非常勤職員さんや派遣社員さんの相談にのるとき、必ず訊くというか確かめることは労働条件のことなのだけれど、最近痛感するのは、彼女たちは、各省庁当局や派遣元会社から、ちゃんとした労働条件について教えられていないということ。
賃金さえもらっていれば大丈夫、って感じで、賃労働という法契約(権利と義務関係)において働いているという意識が希薄(きはく)なのだ。
ぜひ、非常勤職員さんと派遣社員さんは自宅に帰ったら調べてほしいのだけれど、労働条件通知書とか雇い入れ明示書とかいう文書があるはずです、……辞令とは違いますから気をつけてください(笑)。労働条件通知書というのは、労働基準法第15条にもとづいて労働者に交付されるべきもので、事業主に課せられた義務なのだ。万が一、公務職場で労働条件通知書が渡されていなかったら、即、労基法違反で罰せられます。
通知書には、契約期間、就業場所、業務内容、労働時間、休日・休暇、賃金、退職に関する事項などが定められていて、これが間違っていたら、きちんと正してもらわなければならないし、派遣社員さんなら派遣契約を蹴(け)ることもできる。
解雇とか退職とか、賃金などのトラブルが起きたとき、働く者は、この労働条件通知書をもらっていないことに初めて気がつき、慌てることになる。もらっていても、契約内容が現実の労働条件と著(いちじる)しく違っていたりする。事業主も、そういう労働者に対して「労働契約を結ぶ際に、確かめなかったあなたが悪い」と反撃に出る。しかし、心配する事なかれ、交付されていない場合、それは事業主の責任になりますから……。
労働条件通知書は、働く者にとって恋人のような存在かも知れない。あれば力強いパートナーとなるし、なければ別れ際、あるいは別れた後、その存在の大切さに気がつくという(苦笑)。
いま霞が関の職場には、定員削減の正職員の穴を埋めるように、非常勤職員さんの他、派遣社員さんがたくさん働き始めていて、まさに国公職場で労働基準法(労働者派遣法)の世界が広がりつつある。みなさん、もう一度、労働条件通知書または雇い入れ明示書を確認してくださいね。
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コメント
はじめまして。
新米派遣コーディネーター兼事務をしています。
毎日何気なく発行している通知書や明示書は実はとても大切な物だったんですね。
漏れなく発行していたので、ほっとしています。
投稿: ESTEE | 2006/01/24 午後 03時52分
ESTEEさん、こちらこそお世話になります。いま霞が関にも派遣社員さんがたくさん働いておられます。国公一般(国家公務員一般労働組合)は、派遣元や派遣先と交渉を始めています。法律に基づいた雇用契約をしっかりしてもらいたいですね。今後ともよろしくお願いします。
「今日も歩く」さん、そちらのブログも格闘の記録ですね。お互い、妥協せずにやりましょう。ところで民主党の代表質問の公務員改革部分は、聞いていられない噴飯(ふんぱん)ものでした。
東京国税局管内セクハラ事件をめぐって、ブログ読者のみなさんの意見や励まし、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
とりわけ、税務署職員のみなさん、非常勤職員さんの組織では、お知恵や協力をお願いします。仲間を増やさなければ、組合員を見殺しにすることになります。
僕は、圧倒的多数の税務署職員の懸命な働きを知っています。
投稿: 国公一般担当者(長め) | 2006/01/25 午後 12時18分