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2005/09/12

公務員を殺せと叫んでいる

 今年の6月のことだけれど、なじみの飲み屋で、僕が何気に「ボーナス入ったから、奮発してたくさん食べようかな」と言ったら、ガテン系の労働者が鋭い目つきで「お前、公務員か?」とドスの効いた声で言うので、「ええ、まあ」と答えたら、「この税金ドロボウが、楽な商売しやがって」と難癖をつけられた。もう少しで喧嘩になりそうだったけれど、僕は、黙ってこらえた。
 いまどき、ボーナスは公務員と直結する言葉なんだ、こんなにも公務員が憎しみの対象となっているのかと痛感した出来事でした。

 ……さて、国公一般のブログの読者のなかには、大手のマスメディアで働いている人もいて、ときどき取材を受けるようになったのだが、下記に添付するのは、ある記者からのメール全文です。彼の了解を得て掲載しますね。今回の総選挙の本質的なものが、客観的に追ってきた記者の目から浮き彫りになっていると思うからです。 


 ごぶさたしております。
 総選挙はご存じのような結果でしたが小泉の最大の狙いはやはり、自民党内の反対派崩しより、いかに民主党にうち勝つかだったと思います。前回の選挙の流れで行けば、政権交代は時間の問題でしたから、その流れとは違う対決軸を作り出す、その絶好のタイミングをとらえたと思います。

 政治家には直観も大事なのですが、小泉恐るべしです。

 ちなみに直観といえば、経済学者のシュンペーターは、理論以前の直観的認識をビジョンと呼び、理論よりも重視していました。オックスフォードの経済学者ハロッドは「アメリカ的統計をいかに駆使しても、イギリス社会の現在の特徴は把握できないだろう。イギリス社会を知ろうと思ったら、それに関する一編の優れた小説を読む方がいいのかもしれない」(『社会科学とは何か』岩波新書、清水幾太郎訳)と言っています。

 選挙中、小泉首相の演説を聞きましたが、そこで非常に危険なものを感じました。
 彼の言うのは郵政民営化一本やりなのですが、「郵政事業は公務員がやる必要があるのでしょうか、38万人もいるんです」「反対派も民主党も国家公務員の身分を失いたくないと言う既得権を守ってくれと言う勢力の応援を受けているから民営化に反対なんです」というのが中心です。
 これが何を意味するのか。

 横浜の公明党候補を応援に行った街頭演説の時、小泉の前座に立った現地の公明党市議の話を聞いてぴんときました。その市議は市営バスの問題をとりあげて、非効率だ、それは市営バスの運転手の給料が800万円だからだ、競合する民間のバス会社の運転手は500万円だと言って演説していました。
 公務員攻撃の典型ですね。
 自分は市議として1000万以上の歳費をもらっているくせに、何を言っているんだと思いましたが、これを駅前を埋めた1万人以上の聴衆が拍手で聞いているところが不気味なのです。

 つまり、「いま楽をしている連中に、みなさんと同じ苦労をさせます」というのが公務員攻撃が受けるところなのです。ここに小泉が変えたいという角栄型政治との根本的違いがあります。
 角栄は「道路をつくります」「橋を造ります」といって、みなさんのためになることをするといって、金をばらまきながら票を集めたわけですが、財政破たんの今、国にそのようなゆとりはありません。そこで小泉は、有権者の実利になることではなく、誰かをスケープゴートにすることで、観客である有権者の歓心を買うわけです。劇場型政治といわれることの本質は、「生け贄政治」「見せしめ政治」なのだ、私はそう感じました。古代ローマで奴隷が互いに殺し合うのを市民が見物し、あるいはフランス革命でマリー・アントワネットをギロチンにかけるのを公開したのと同じです。このように感じたのはぼくだけではなく、同僚の記者が何人も同じように感じたと言っていました。

 ちなみに大阪で小泉の街頭演説を取材した社会部・N記者のメモは「小泉の話は郵政一本でいつもと同じだが、郵政職員38万人も必要かというところで沸く感じ。地元市議が大阪市役所の裏給与問題などを話しており、(組合との癒着を批判、市長選で応援してもらっているから)最近の雇用不安もあり、なぜ公務員だけ優遇されるのか、首切りもないし、うらやましさも混ざった『公務員敵』論みたいな感情に小泉の演説が受けている感じがした」と書いていました。

 いわば小泉の郵政民営化論は人間のしっとやねたみなど、俗な心にうけるのです。逆に言えば、それだけ国民にフラストレーションがたまっているとも言えるわけです。行き場のない得体の知れない不満が自民圧勝をもたらしたと言えるでしょう。

 だいたい郵便屋さんが国家公務員だからといってそんなに楽をしているなんてことはありません。大量の郵便物や、きつい貯金獲得のノルマにおわれて、総じて見れば安月給です。人減らしも着実に進められています。多少民間よりいいとすれば、民間の条件が悪すぎるので、こちらこそ変えるのが国民のためになるのに、そこに気づか
ず、小泉の演説にどこでも五千とか一万の人が集まって、公務員いじめに拍手する。
 自分の首を絞めるこんな悲劇があるでしょうか。ユダヤ人を攻撃して人気を得たナチスとまさに重なってきます。

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コメント

選挙の結果を見て、
「戦争に向かう前ってこんな雰囲気なのかな、でもそこまで日本国民は馬鹿じゃないよね」
と何となく思っていたのですが、この記事を読んで、とても怖くなりました。

公務員が楽をしているのか?
実際にどのような働き方をしているかは、このブログを見ていれば分かります。

投稿: てるみ~ | 2005/09/12 午後 09時07分

 てるみ~さん、いつもホームページ見てますよ。守備範囲が広くなりましたね~(笑)。
 さてさて、テレビを含めて注目されつつある国公一般ですが、こういうネタも出していきますから、今後ともよろしくお願いします。
 大変な時代がやってきましたね。

投稿: 国公一般担当者 | 2005/09/12 午後 10時18分

霞ヶ関で働いている者です。今回の選挙結果を踏まえて一言言わせてください。小泉さんの言う民営化が正しく、国の仕事として優先的に行わなければならない課題なら、まず、自民党自身を民営化してはどうですか?自民党は国からの税金としてもらったお金〔政党助成金〕は9年間で1315億円です。これこそ、お金のムダであり国営的な党だと思います。このお金でCMや人件費、ある議員は携帯ストラップ5千個〔173万円相当〕を買ったそうです。しかし、この様な話をしても今の時代ビジュアルやイメージや直感に流れてしまう傾向に恐ろしさを感じております。こらからは、様々な情報に対して真偽を見抜ける人間になりたい。私にとって少なくともここのブログは真実を伝えている場所だと思っています。これからも、がんばってください。

投稿: 匿名希望 | 2005/09/12 午後 11時26分

ナチスがどうのと、安易に他国の歴史的惨禍に例えるのは止めてください。日本人は身近にユダヤ人がいないから気兼ねもないのでしょうが、外国人から見たら、なんて思いやりがないんだと呆れられますよ。反小泉の亀井さんにしても、ナチスだヒトラーだと叫んで外国人記者の不興を買っていたんですから。
もっと、貴方ご自身の言葉で語られることを、期待しています。

投稿: 気になった | 2005/09/16 午前 12時55分

 匿名希望さん、「気になった」さん、コメントありがとうございます。
 匿名希望さんの、政党助成金の問題は官と民の視点から、なるほどと思いました。調べてみると、政党助成金は、何にでも使える機密費みたいな性格なんですね。
 「気になった」さん、読めば分かりますが、僕の文章は前半だけで、あとは記者さんのメールの全文です。
 今回の選挙で、公務員が「生け贄」にされたという記者の指摘には頷くところがありました。記者の言葉ではありますが、「公務員生け贄」論を比較や比喩で表現することはありうると思います。しかし、日本人は、歴史的惨禍から教訓を学んでいるでしょうか? 

投稿: 国公一般担当者 | 2005/09/16 午前 09時15分

私の職場はまさに民主党支持を公言している公務員労働組合なので、スケープゴートそのものです。まして支持してきた民主党の新党首からもスケープゴートで、やってられん、という気持ちです。政治はそんなものかも、というのは高校時代に習得したので、小泉・前原のいやらしさを復習させていただきました。でもそんな社会は嫌ですね。あと19年、子どもが就職する時代に、息苦しいようだったら、北欧諸国に脱出しようかと思っています。
政党助成金について厳しい意見が続いていますが、大目に見たほうがいいですよ。企業献金が期待できない野党がかろうじて生き残る命綱みたいなものです。企業献金を得るために公共事業をばらまいて大きな財政の穴あけるぐらいなら安いものです。

投稿: きょうも歩く | 2005/09/19 午前 01時17分

 結論から言って、公務員叩きはなくならないと思います。世論操作の上での、仮想敵にしやすいからです。そして因縁つけての憂さ晴らしです。
 仮想敵に頼る団結や共感は、その集団の質を下げると思いますけどね、10年近く地方公務員やっている者の感想としては、それが分かっていても、どうしようもないということです。

投稿: 匿名 | 2007/09/23 午後 01時55分

 匿名さま

 公務員バッシングは、結局、国民生活を悪い方へ向かわせると思っています。公務というものを破壊してはいけない。このことをどのような言葉で語るか、だと思っています。
 たいへん難しい問題で、「どうしようもない」という気持ちもわかりますが、活動の足を止めてはいけません。お互いに支え合っていきましょう。グチでも批判でも構いません。いつでも連絡下さい。

投稿: 国公一般担当者→匿名さま | 2007/10/04 午後 05時28分

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