« 集会の報道 その2 | トップページ | ソウル二話 似ているようで似ていない »

2005/07/08

ソウル一話 公務員は「鉄の弁当箱」 

 3日、東京・成田を発った大韓航空907便は、約2時間のフライトの後、雨でけぶる仁川(インチョン)空港に降り立った。空港内部のつくりも行き交う人々の表情も日本のそれと変わらないような気もするが、やはり明らかに何かが違うと感じる。若い女性の税関職員や痩せた義務警察官(徴兵制で選択できるようだ)の姿は、日本のものとはまったく違うのだ。
 やがて女優の麻生祐未を一回り小さくしたような、通訳の朴(ボク)さんが「こんにちは~」と出迎えてくれる。情けない僕は、「アニハセヨ~」が言えない。当然ながら、彼女の日本語ペラペラなのに驚く(このとき、まだ僕は、この通訳さんの本当の素晴らしさを知らない)。

 バスで移動、ソウルの繁華街・明洞(ミョンドン)のホテルへ。民営企業が高い交通料金をとっているという一本きりの高速道路をひたすら走る。地下鉄の建設や干潟の埋め立て工事、林立していく造りかけのマンションなど、いまソウルは建設ラッシュで不動産バブルに沸いているという。朴さんは言う、「政府は、一昔前の日本のバブル景気と弾けたあとの長期不況を知っているので、その対策に頭を悩ませている。マンションの部屋、一坪100万円なんていうのはざらなんですよ」。

 韓国の人口は、約4200万人。うちソウルの中心街と郊外には、合わせて2000万人が暮らす。やがてソウルを東西に流れる漢江(ハンガン)という、巨大な河があらわれる。冬になると見事に凍結するという。湿気のない住みやすい夏と秋が、やがて零下20℃にもなる冬を準備している。
 朴さんは、「ソウル市長は、飽和状態にあるソウルを分散させようとしています。郊外で分譲マンションがどんどん建っているのは、そのためです」とアナウンス。石やレンガでつくった建物が通り過ぎ、霧雨でけむる河の向こうに摩天楼のようなマンションが並んでいる。
「ソウルがどんどん変わっていく…、あなたは日本に似ていると思うでしょうが、韓国全体からすれば日本に7、8年は遅れているでしょう。しかし、いまソウルは、日本とは違う方向でどんどん変わろうとしている。その活力は、円安につながるほどなんですよ。その変化を、あなたの目で確かめてください」
 半年前、1万円=10万ウォンだったレートは、さっき空港で換金すると8万9000ウォンだった。

 明日(4日)の午後、全国公務員労働組合(KGEU)を訪れることになっていた。
 朴さん「こちらでは、公務員は『鉄の弁当箱』って揶揄されているんですよ
 僕  「どういう意味ですか? 鉄の弁当だったら開けられないじゃないですか」
 朴さん「アハハ…。そういう意味ではありません。それだけ強く給料が守られている、身分が一生保障されているという意味で、民間労働者から妬まれているという意味です」
 僕  「日本と同じだ。…いや、日本は『税金泥棒』って言われているから、もっとひどいかもしれない」
 朴  「『税金泥棒』? それはひどい言い方だわ」

 バスの乱暴な運転は、ソウル市内の激しい渋滞が自然と教えたものかもしれない。ホテルまでの道程、何度も途中で無理やりのUターンをする。
 ホテルのある明洞は、まるで新宿・歌舞伎町のようなところだった。明るいネオンと薄着の若者たちで溢れている。新宿を漂う、色のついた空気が、ソウルの霧雨に流されたようで、バスを降りたときに嗅いだ匂いは、少し熱をもった異国の純粋な露地の水の匂いだった。
 ……いや、目の前の屋台で揚げている牛蒡(ごぼう)巻きの、黄味がかった油の匂いだと思った(笑)。

 部屋に戻ると、泥のように眠った。

|

« 集会の報道 その2 | トップページ | ソウル二話 似ているようで似ていない »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ソウル一話 公務員は「鉄の弁当箱」 :

« 集会の報道 その2 | トップページ | ソウル二話 似ているようで似ていない »