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2005/07/14

心の奥にあるものは 後編

 昨年1年間、韓国社会は、公務員の労働三権をめぐって揺れに揺れたのだ。当初、「公務員の労働三権は守られなければならない」と明言していた盧泰愚(ノ・テウ)政権だったが、国会に提出した「公務員労組特別法」は、公務員を労働者として認めず、団体交渉権やストライキ権を否定するものだった。
 よくよく調べてみると、政府案は、一般の労働法とは別の、「公務員労組法」によって公務員の主な案件が決定されるというもので、はっきり言って、日本の国家公務員法をまるまるパクッたことは間違いないだろう(苦笑)。

 非合法団体である公務員労組は、全国各地の大学の構内で大規模な抗議集会を開き、秋には約5万人の公務員ストライキを打って政府の悪意あるくわだてを国民に知らせようとした。しかし、警官の弾圧や不当逮捕、ストライキに参加した者への懲戒解雇(公職追放)などが加わり、年末、国会会期末ギリギリで法案は可決してしまう。
 金委員長は、「いま仲間の復職を勝ち取るたたかいをすすめている」と言っていたが、彼女彼らは、労働者は弱く、弱いから団結しなければならぬことを知っており、団結の具体的なかたちは団交でありストであることを身をもって理解している人たちだ。だからこそ、労働三権をめぐっては絶対に妥協できないと腹を括っているのだ。
 僕は、日本の国家公務員の身について考える。戦後すぐ労働三権を奪われ、その代償機関として人事院がつくられるのだが、いまや(同じ仕事をしていても)住んでいる地域によって賃金に格差をつける勧告を準備するほど、その内実は変質している。当局との交渉も管理運営事項(国会で決まるような給与法など)は、議論できない建前だ。もちろん、国公労連は、そういう制約があるなかでも示威行動を配置し、粘り強く交渉を重ねているのだが、……しかし、国とキャリア上司のやり方に唯々諾々と従う、魂の抜けてしまった職員(それが本来の国家公務員なのだと主張する職員)が増えていることは否定できないだろう。

 金委員長や李委員長は、本当のところ、僕に対して、「日本のたたかいが弱いから、日本の悪い部分が韓国に輸出されるのですよ。こんなところに話を聞きに来る暇とお金があれば、日本のたたかいを前進させて下さい」と言いたいのではないかと思った。

 経団連の雇用流動化(不安定化)戦略が見事に成功し、いま日本の若者は、ごく一部の「勝ち組」と大多数の「負け組」へと、二極拡大している。Ⅱ種で入省する職員のなかには、自分を「勝ち組」だと公言する奴がいるから困る(笑)。そういう状況で、組合が呼びかける連帯や団結は成立するのだろうか?
 
 僕が組合活動をする理由は、その可能性の中心を確かめたいからに他ならない。

 僕は、最後に李委員長に訊いてみた。
「委員長、突飛なことを訊きますが、あの~、人間と人間とは、果たして理解し合い、手を携えていくことはできるのでしょうか?」
 通訳の鈴木さんが、「連帯できるから、あんた、組合やっているんだろう! 何、馬鹿なことを訊くんだ?」というような厳しい目で見ている。

 李委員長の隣にいる女性組合員が答えた。
「その問いは、労働組合の存在理由にかかわるものです。言い換えると、それは『愛』とか『ヒューマニズム』とか呼ばれるものかもしれません。それは成立可能か? と言われれば、永遠の課題ではないかしら……。私たちは、その答えを追求し続けるしかないのです
 僕は、彼女の言葉に胸が熱くなった。
 今度は別の組合員が付け加える。
「…ある組合活動家がいたんですよ。彼女の実家がお店を開いていて、でも貧しいので人が雇えない。実家の者が、彼女に組合活動をやめて店を手伝えと言う、しかたなく彼女は店で働き始めた、……しかし、私たちは同志でした。組合の仲間が交代で、代わる代わる、彼女のお店を手伝うことで、彼女の組合活動への復帰を可能にしたのですよ。……こんな話で、あなたの質問の答えになるかしら?」

 僕は、嬉しい気持ちでメタメタに打ちのめされていた(笑)。
 日本の団塊の世代からは、絶対に出てこない言葉だと思った。

 …すごい、本当にすごいぜ、韓国の公務員労働組合!!

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コメント

どうも。きょうは宣伝に協力していただき、ほんとうにありがとう。参加してくれて、とてもうれしかったです。おかげで(!?)、仲間も出てこられることになりました。いま、言論の自由にたいする妨害・弾圧が激しくなっていますが、それだけ、私たちの主張と運動に大きく共感がひろがっているもとでの、「最後のあがき」みたいに感じますよね。連帯の輪をひろげていって願いが通じる社会にしたいですよね。(記事とあまり関係ないコメントですみません)

投稿: 清水 | 2005/07/15 午後 10時04分

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