ソウル最終話 歴史問題をめぐって
韓国の公務員労組との懇談会が終わろうとするとき、向かいに座っていたソウル市役所労組の副部長さん(女性)が、「最後に、どうしても意見をうかがいたい」と言って立ち上がった。
彼女の質問は、労働組合の問題から大きく離れていた。しかし、彼女から、これを聞かなければここに来た意味はないというような切迫したものを感じさせた。
彼女の質問は、
1.あなたが、もし「従軍」慰安婦だったら、日本の政府に何を求めるか?
2.韓国の慰安婦たちが、日本政府に補償を求めていることをどのように理解しているか?
というものだった。
僕は、来るものが来たーッという感じで、身構えてしまった。
しかし、なんとか絞り出した僕の答えは、次の通り。
1.について。「謝罪と補償を求めるのではないか」
2.について。「これまで朝鮮の慰安婦たちが受けてきた差別や偏見、苦しみを考えるとき、日本軍国主義に対して怒るのはわかる。その償いをしていない(最近では、慰安婦の存在を否定しようとしている)日本に対して謝罪と補償を求めるのは、当然だと思う」
僕は続けて言った。
「僕個人の考えで言えば、いま日本国憲法9条を変えようとしている動きがあり、その運動は、過去の戦争に対する反省が不十分な人たちではないかと思う。慰安婦にされた女性たちを守ることと憲法9条を守ることとは、深い底でつながっているのではないか」
女性は、「別にあなたに日本政府を代表して発言してほしいと言っているわけではありません」と笑い、「ありがとう」と頭を下げた。
翌日の5日は予定を変更して、通訳の朴さんと一緒に独立記念館とナヌムの家へ向かった。ナヌムの家では、慰安婦のおばあさんから、直接、体験談を聞くことができたのだった。
朴さんは、「日本のお客さんで、独立記念館まで来る人はいない。辛い立場になるでしょう」と言い、「展示物を見たら、気分を害されるかもしれません」と悲しそうに俯いた。
しかし、再び頭を上げて、僕に言った。
「あなたの機嫌を悪くしたいという意図はないのですよ。独立記念館の展示物は、韓国で教えられている歴史だと考えてください。昔の日本人たちがやったことですが…、許すことはできる、しかし、忘れることはできないのです」
朴さんは、「実は、日本の歴史教科書を大国的に変えようとする人がいるように、韓国の若い人のなかにも、『朝鮮はなんて弱い国なんだ』とか『なんでこんな弱い国に生まれたんだ』とか『こんな国のために徴兵制度があるなんて最悪』と不満をあからさまに主張する者も出てきています」と複雑な表情で言うのだった。
僕は、いっときの感情に流されるのではなく、改めて朝鮮と日本の歴史を学ぼうと思った。少なくとも朴さんは、バランス感覚を持って日韓の歴史を踏まえている。
大学を卒業して日本の旅行会社に就職した朴さんは、韓国旅行の研修のとき、社長が「韓国の連中が、日本の戦争責任についていろいろ言うかもしれないが、そんなの無視しろ、俺たちには関係ないからな」と言い放ったのに出くわし、首になるのを覚悟で反論したという。
「私は、『…社長、一言いわせてください。韓国人が問題にするのは、事実を見てくださいということでしょう。植民地時代のことは、終わっていないのですよ』と言ってしまいました」
朴さんのバランス感覚は、「未来責任」という言葉がぴったりだ。
ホントは、このあとのこともいろいろ書きたいのだが、ソウル編は、ここまで!
(人事院勧告前で、ほかにたくさん書きたいことがたまっていまして、申し訳ない)
読んでくれたみなさん、カムサハムニダ!!
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コメント
教科書問題を追っかけてます。子どもたちに閉じられた過去を教えるのか、開かれた未来を教えるのか…。「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」(教育基本法第10条)です。この教科書を使いたい、と言った先生方。4月から、直接その責任を、保護者から、そして子どもたちから問われます。「ノーコメント」とは言えません。
投稿: hi-de | 2005/07/20 午前 09時39分
失望しました。どうぞ、歴史を勉強してください。すでにさまざまな形で反駁がなされている韓国人の受け売りを読みにここへ来ている人ばかりではありません。このようないい加減な主張を目にすると、他の主張の正当性をも疑われてしまうこともお忘れなく。
投稿: 名無し | 2005/07/22 午後 09時01分
上記書き込みに賛成です。労働組合は、公務員の処遇の問題の対応に専念し、解決に向けて活動してください。歴史問題や、憲法9条問題等、労働組合とは直接関係ないであろうプロパガンダが多すぎです(特定の党の主張に偏りすぎ)。私も、公務員の労働条件のために、労働組合に関心はあり、参加したいと思いますが、それ以外のプロパガンダを見ると鼻白んでしまいます。
労働組合は、全公務員のためにあるものだと思います。不用な政治的活動・言動は厳にやめていただきたい。
投稿: | 2005/07/28 午後 06時50分