« ソウル一話 公務員は「鉄の弁当箱」  | トップページ | ソウル三話 心の奥にあるものは 前編 »

2005/07/11

ソウル二話 似ているようで似ていない

 4日の午前中、昨日とは一転して青く晴れ渡った空の下、ソウル市庁舎前の緑は映え、噴水では子どもたちが裸で水浴びをしていた。日本と似ているようで似ていない、やはりそんな感情が生まれる。
 そこへやってきたのは、世界女性行進のデモ隊だった(笑)。女性たちが持っているプラカードには、英語で「女性への暴力反対」「ストップ人身売買」「沈黙を破れ!」「一人の命は、国家よりも重い」などの言葉が躍っている。総勢100人ぐらいの(ほとんど女性による)小さなデモだったが、女学生らしき人が力強いシュプレヒコールをあげると、本当に心の底からスローガンを復唱している真剣さが漂っていた。
 ソウルの激しい交通事情のためかデモは歩道を歩き、日本にいるような監視役の警察官はほとんどいない。
 参加者に話を聞くと、世界女性行進というのは、平等・自由・連帯・正義・平和を基調にしたもう一つの世界を模索しようと、世界の女性団体が連絡を取り合い、世界各国をリレーのように行進して訴える企画のようだった。
 通訳の朴さんは、言う。
「韓国では、この3月に(日本が植民地時代に改変した)戸籍法が廃止されました。それまで、日本では戦後に廃止された戸主制度が残っていたのですよ。男性に限られ、一家の権力を掌握する戸主、そのため子どもの姓は父方のものになる。最近の韓国では離婚率も高くなり、戸主制度のもとで子どもを持った女性が再婚すると夫・妻・子の三者が全員パラパラの姓となり、いじめの温床とも言われてきたものです。いま国会は新しい戸籍制度を模索していますが、女性たちの声を届ける必要がありますよ」
 儒教の教えが生活の隅々まで残っている韓国では、儒教団体が、戸籍法の改正は「国の根本を破壊するものだ」として大反対しているそうだ。なんだか日本でも聞いたような話だな(笑)。
「韓国には、女性の昇進・昇格差別が深刻です。仕事を優先すれば、子どもが産めない、家庭がつくれない構造になっている。韓国はとうとう世界ワーストワンの少子化1.17になってしまいました。この前、軍隊で乱射事件がありましたが、犠牲者のほとんどが一人っ子でした」
 そのように言う朴さんは、2人の子を持つワーキングウーマンだ。制度を変える側と保守する側の意見をバランスをとって説明してくれるスマートさを兼ね備えているが、やはり、選び取られた言葉から滲み出す切実なものがあると思った。

 バスは、いよいよ全国公務員労働組合(KGEU)へ向かう。3年前に結成されたばかりの新しい組合だと聞いて、韓国国民の民主化へ向けた茨(いばら)の道を想像せざるを得ない。
 漢江を渡ると円形の青銅が目立つ国会が見えてくる。そうして、自動車部品などが密集して売られている街を越したところに組合事務所が入るビルがあった。
 韓国の国家公務員は約16万人、地方公務員は約33万人といわれている。そのうちKGEUは、約10万人を組織する。昨年、KGEUは、公務員の労働基本権を確立するためにストを含めた激しいたたかいを展開したのだが、僕は、全労連からそのときのビデオを見せてもらって、彼女彼らの活動の中心にあるものを知りたいと思っていたのだ。どうしようもなく気持ちが高ぶる。

|

« ソウル一話 公務員は「鉄の弁当箱」  | トップページ | ソウル三話 心の奥にあるものは 前編 »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ソウル二話 似ているようで似ていない:

« ソウル一話 公務員は「鉄の弁当箱」  | トップページ | ソウル三話 心の奥にあるものは 前編 »