「悪魔のサイクル」とは、「貧乏比べ」のことですから。
国公労連の宣伝行動や集会での発言でよく聞く言葉に、「悪魔のサイクル」という言葉がある。例えば、「官が賃下げとなり、その影響を受けて民間も賃下げとなる。このままいけば、悪魔の賃下げサイクルへと突き進むでしょう」などと使われる。
今日閣議決定された「新大綱」では、政府は、さらに国家公務員の定員削減を推し進め、「地域における官民の給与較差を踏まえ、…取り扱い方針を決定する」とある。国家公務員の職場は、さらに忙しくなり、給与水準はどんどん引き下げられることになる。何度も書くけれど、小泉行革の本質は、いかに公務にかけるお金を減らすかということにある。人員を減らす、給与額自体を減らす、究極のところには、治安・外交以外の公務そのものをなくすという段階が待っている。税金で賄(まかな)われていた公務分野を民間に開放して、儲(もう)けを生み出す市場と化す日を目指しているのだ。
…でもね、実際は、国家公務員を減らしても借金は増え続けるばかりなんですよ。もっと大胆にカットすべきものがあるでしょうに。
今日読んだ報告書が、日本経団連の『経営労働政策委員会報告書2005』なのだが、ここで大企業のトップは、「行財政改革を推進すべき立場にある公務員の身分、処遇がいわば聖域におかれていいのか」と問うている。そして「民間労働者と同じ環境にあってこそ」改革はすすむと書いてある。世間では、(無知な?)マスコミが、国家公務員の虚像(暇な仕事なのに高収入といったイメージ)を振りまいているから、一般的には、小泉「新大綱」は、ウケがいいかもしれない。民間が、こんなにも頑張っているのだから、官も頑張れ。民間も血を流しているのだから、公務も血を流せ、みたいな精神論を含めて。
…でもね、よくよく考えると、この論法が、冒頭でのべた「悪魔のサイクル」にはまり込んでいるレトリックだということに気がつく。
一言で言って、小泉内閣と日本経団連が手を組んで推進しようとしているのは、官民の「貧乏比べ」なんですから!! ニワトリが先か卵が先かという問題はあるけれど、とにかく彼らは、どんどん僕らを競わせて貧乏にさせようとしているんですよ。公務の労働条件を下げて民間並にする、そうすると、公務が下がったんだから民間もそれに倣(なら)って下げる、民間がさらに下げたのだから公務ももっと賃下げする…てな感じで、永遠の「悪魔のサイクル」が待っているのだ。
でも、良識ある民間企業人や地場産業の担い手たちは、公務分野での経済効果が低下することを大変懸念している、というか、小泉内閣の経済失政を見抜いている。今年、政府が企てた地域手当削減の動きに対して、東北の自治体が一致して反対の声を上げたけれど、そこには、「公務員憎し」の気持ちはない。年間300億円とも言われる地域手当(灯油・ガソリン代、電化製品、防寒具その他)の地域経済への影響を考慮に入れていたからなんだ。
これだけ不況が続くと、小泉「改革」というものの正体が、端っからニセモノで、官も民も幸せにしないのだということがわかってくるよね。
財務省の連中の頭も固いけれど、もっとまともな経済学者は、いないのかね。
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